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対象疾患

慶應義塾大学医学部外科(一般・消化器外科) 血管班

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はじめに

「血管外科」という言葉は、一般的には馴染みの薄いものかもしれません。われわれがどのような疾患を対象としているのかを、症状や治療法を示しながら簡単に説明いたします。何か不明な点、心配なことがあれば遠慮なくご相談ください。

腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm: AAA)

お腹の中の一番太い動脈がふくらんで瘤(こぶ)を形成する病気です。原因としては動脈硬化が最も多く、通常ある程度の大きさになるまで症状は全く認めませんが、気付かない内にどんどん大きくなり、一旦破裂してしまうと、突然激痛が生じ、死に至ることが多い恐ろしい病気です。


腹部大動脈瘤の術前CT写真


開腹したところの所見


ステンドグラフト手術後

 

お腹に拍動を触れる、健診でお腹の中の動脈にこぶがあると言われた、といって受診されることが多いようです。
重要な危険因子として喫煙および高血圧があり、動脈瘤があると指摘された方は注意してください。また遺伝的な要素も一部関連があるといわれており、家族で腹部大動脈瘤を持っている方がいた場合にも注意してください。

動脈瘤は出来た位置と大きさ、かたちなどから総合的に判断して治療方針を決定します。最近では、治療の低侵襲化を目標にステントグラフトを中心とした血管内治療を積極的に行っています。


下肢静脈瘤

下肢静脈瘤かな?不安を感じたらチェック

 以下の項目に思い当たることはありませんか? Yes
1.夕方になると脚がむくむ。
2.夕方になると、脚がだるくなる。
3.脚がかゆい。
4.たまに、こむら返りする。
5.不自然に血管が浮き出ている(膨らむ)。
6.クモの巣状の血管が見える。
7.大腿部の内側や下腿に大きな血管の不自然なコブがある。
8.脚が重い。

上記項目にあてはまる場合、下肢静脈瘤の可能性が高いので一度お気軽に相談ください。

静脈は四肢の末梢から心臓に向かって血液を戻す役割を担っておりますが、血液の流れの向きが一定になるように逆流を防止する「弁」が備わっています。これらの「弁」が何らかの理由で壊れてしまい、逆流が生じて静脈が膨らんでしまうのが静脈瘤です。
立ち仕事や妊娠、肥満など下肢に負担がかかる方に多く、遺伝も関係しているといわれています。


両下肢の静脈瘤


大腿の裏面に生じた静脈瘤


網目状の静脈瘤

無症状で血管だけ浮き出ていることもありますが、一般的な症状としては足がだるくて疲れやすい、むくむ、寝ているときにつる、黒っぽい色がついてかゆい、静脈炎がおきて痛い、なかなか治らない潰瘍があげられます。

静脈瘤によるうっ滞症候群で生じた色素沈着・潰瘍

下肢静脈瘤自体は生死にかかわるような悪性の病気ではありませんし、下肢の切断につながるようなこともありません。しかし徐々に進行していく慢性疾患であり、患者さんと症状を相談しながら希望に応じて治療を行っております。
保存的治療としては弾性ストッキング着用による圧迫療法がありますが、注射による硬化療法、外科的手術として静脈抜去術(ストリッピング手術)や高位結紮術およびレーザー治療をすべて保険適用で行っております。通常2~3泊の入院ですが、日帰り治療も可能です。

またこの治療は主に関連病院である高田馬場病院で当科のスタッフが行っており、これまで20年間で3000例以上の実績があります。

レーザー治療について

レーザー治療は、正式には“血管内レーザー焼灼術”(Endovenous Laser Ablation, EVLA)と言い、逆流している伏在静脈内にレーザーファイバーを挿入し、血管の内側から熱で焼灼することにより血管を閉塞させてしまう治療です。主に伏在型静脈瘤が適応となります。従来の下肢静脈瘤に対する治療法として伏在静脈ストリッピング術が挙げられますが、レーザー治療はストリッピング術と異なり、通常は膝の周囲に細い針を穿刺するだけで治療が可能なため、術後の痛みが少ない、傷跡が目立ちにくいなどの利点があります。また、血管を引き抜くわけではないので、出血のリスクも軽減されます。
費用に関しては、レーザー治療のほうがストリッピング術と比較して割高ですが、2011年1月よりElves 980nmレーザーによる保険診療が可能となっており、当院関連施設である高田馬場病院にて保険診療での治療を行っております。全般的な静脈瘤の治療は高田馬場病院にて行っておりますが、まずは当院外来にてお気軽に御相談ください。

elves 980

ストリッピングについて

下肢静脈瘤の根治的な治療法として、古くから行われている手術手技の1つで、主に伏在型静脈瘤が適応となります。弁の機能不全を起こし血流が逆流している大伏在静脈もしくは小伏在静脈の血管内に、手術用ワイヤーを通してワイヤーを引き抜くことにより悪くなった血管を取り去る手術法です。創は、主に大腿部の付け根と膝周囲の2箇所を切開して行うことが多く、状況により小さい静脈瘤を小さな創から切除する場合もあります。レーザー治療に比べて再発率が低いとされており、一番確実な治療法とされています。
しかしながら、ストリッピング手術は静脈を抜去するため、周囲を走行している知覚神経を傷つけてしまい、術後にしびれや疼痛が持続することがあります。また、切開に伴う手術痕が残るという点では、美容面での問題があります。
当院では麻酔に伴う身体への影響を軽減するため、局所麻酔と静脈麻酔とを適切に併用し手術を行っています。そのため、術後早期の日常生活への復帰が可能となり、当院では基本的に2泊3日の入院での手術加療を行っています。


腿の付け根と膝周囲の2箇所に切開を置き、悪くなった静脈を確保します。


静脈内にワイヤーを通して、ワイヤーと血管とを一緒に引き抜きます。


残った静脈は糸で結んで、出血を予防します。

腹部内臓動脈瘤

腹部大動脈から分枝する内臓を栄養する動脈に瘤を形成する病気です。きわめてまれな病気ですが、こちらも腹部大動脈瘤同様に破裂する可能性があるために、注意が必要です。


腹腔動脈・上腸間膜動脈共通幹に生じた腹部内臓動脈瘤


術後のCT写真


実際の術中写真

無症状なことが多く、頻度もまれですが、最近ではCT検査など画像診断が普及したために発見されることが多くなってきています。

当科では以前より腹部内臓動脈瘤の症例数が多く、内臓の血流の温存を第一に血管内治療から外科的手術まで行っており、過去5年間で25例ほど治療しましたが、大きな合併症はなく、極めて安定した成績を上げております。

閉塞性動脈硬化症(peripheral arterial disease: PAD, arteriosclerosis obliterans: ASO)

種々の原因により動脈硬化が進み、動脈がつまったり、狭くなったりして症状が出現する病気です。高齢の男性に多く、食生活の欧米化に伴い、増加傾向であり、危険因子としては高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、透析などがあげられます。

症状は病変部位によって異なりますが、以下に閉塞性動脈硬化症が起きやすい部位の症状を説明します。心配な方は早めに受診し、検査を受けることをお勧めします。

左:歩くとふくらはぎのあたりが痛くなり、しばらく休むとまた歩けるようになります(間欠性跛行)
真中:安静時痛になるといつも痛みが生じます。
右:さらに進行すると、虚血性の潰瘍や壊疽が生じます(下肢の重症虚血肢)

治療は病変部位や症状、患者さんの希望をききながら総合的に判断します。治療法には薬物療法、運動療法(下肢の場合のみ)、カテーテルを用いた血管内治療、外科的バイパス手術などがあります。
また難治性の下腿潰瘍や足趾壊疽などの下肢病変に対しては、積極的にフットケアを行っております。


両下肢の閉塞性動脈硬化症の術前CT写真


両下肢のバイパス術後    実際の術中写真のCT写真

重要なことは症状が出現するような閉塞性動脈硬化症の場合、全身の動脈硬化が進んでいることが多く、狭心症などの虚血性心疾患や、脳梗塞などを合併することがあり、当科では全身の血管管理(Total Vascular Management)を念頭におき、他科とも連携しながら治療に取り組んでおります。

深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)

静脈は体の皮膚の下を走る表在静脈と体の深いところを走るより太い深部静脈に分けられますが、そのうちの深部静脈のほうに血栓という血の塊が詰まってしまう病気です。手術後や病気などで長期間寝たきりの場合、また飛行機で下肢をあまり動かさないような状態のときに生じやすいとされています。それ以外にも妊娠時や癌を患っているとき、また生まれつき血液が固まりやすい方にも生じやすいとされています。

症状としては、下肢のむくみや痛みなどが中心ですが、深部静脈にできた血栓が飛んで、肺動脈に詰まってしまうと、肺動脈塞栓症といって呼吸苦や胸部違和感が生じ、最悪の場合命を落とすこともあるため、注意が必要です。この状態はエコノミークラス症候群としてよく知られています。

深部静脈血栓症は予防が重要です。予防のためにできることは、長期間下肢をあまり動かさない状態が続くような場合に、脱水を避けること、下肢を定期的に動かすこと、また弾性ストッキングを着用することなどがあげられます。

一旦発症してしまった深部静脈血栓症に対しては、肺動脈塞栓症が生じる可能性があるだけでなく、放置すると深部静脈のうっ滞による後遺症として下腿の慢性潰瘍や、2次性の静脈瘤、色素沈着などが生じるため、当科では急性期から積極的に加療しています。また肺動脈塞栓症の可能性もあるために呼吸器内科とも連携しながら治療を行っています。

リンパ浮腫

リンパ系の障害が生じ、下肢を中心に四肢にむくみが生じる病気です。原因が不明な原発性のものと、外傷や手術、感染、放射線照射などにより生じる続発性のものにわけられます。

症状としては四肢を中心とした片側性のむくみが多く、痛みを伴わないことが多いとされていますが、免疫系の異常を伴い、感染を頻回に繰り返したり、皮膚が厚くなり、象皮病と呼ばれる状態になることもあります。

治療は原則として弾性ストッキングなどによる圧迫療法を採用しております。またリハビリテーション科とも相談しながらマッサージの指導も行っております。感染を繰り返したり、難治性の皮膚症状を認めるような場合にはフットケア外来の専任の看護師が積極的にフットケアを指導しております。

FAQ

閉塞性動脈硬化症の血管内治療は痛いのですか?

血管内治療は、カテーテルという管を太ももの付け根や肘の内側の血管から挿入して行います。カテーテルは局所麻酔により挿入するので、局所麻酔を行なう際に少し痛みがあります。

また、細くなった血管を、内側からバルーン(風船)やステント(網目状の金属製の筒)で拡げる際にも、若干の痛みを感じることがありますが、切開を行う手術と比べれば極めて侵襲は低く、術後の痛みはほとんどありません。

ステントグラフトってなんですか?
大動脈瘤のカテーテル治療では、両足の太ももの付け根(鼠径部)を5cm程度横切開し、鉛筆くらいの太さのカテーテル(細長い管)を通して、人工血管付きのステントを大動脈内に挿入します。ステントが金属製のバネの役割を担い、大動脈瘤部分の血管内に留置、密着することで、大動脈瘤への血液の流入を無くし、破裂しないようにします。このバネ(ステント)付き人工血管を、ステントグラフトと呼びます。
腹部大動脈瘤の患者は誰でもステントグラフト治療をうけられるのですか?
すべての方に行えるわけではなく、血管の太さや曲がり方、こぶのできた場所などで、この治療を行えない方もいらっしゃいます。一方で、開腹手術と比べて、体への負担が少なくて済むため、心臓病や呼吸器疾患など、他の病気のためにこれまで開腹人工血管置換術が行えなかった方にも、治療を行える可能性があります。
腹部大動脈瘤で手術をしたら、何日くらい入院が必要なのですか?
腹部大動脈瘤の治療には、おなかを切る開腹手術と、カテーテル治療であるステントグラフト治療があります。開腹手術はおなかを15-20cm切って、動脈瘤の部分を人工血管に置き換える治療で、10日間程度の入院が必要です。ステントグラフト治療は、腹部大動脈瘤に対する新しい治療法で、両足の付け根の約5cmの傷で行うことができ、入院期間は7日間程度となります。開腹手術に比べて体への負担が少ないため、手術翌日から食事や歩行も可能であり、入院期間も短くなります。
下肢静脈瘤で手術したら、何日くらい入院が必要なのですか?
手術前日、もしくは手術当日朝に入院し、手術翌日に退院することが可能です。2-3日間の入院となります。この手術は、主に関連施設である高田馬場病院で当科スタッフが行っております。
下肢静脈瘤手術は痛いのですか?またどのくらいしたら仕事に復帰できるのですか?
手術は1-2cmの傷が2-5か所でできます。傷口の痛みや、血管を抜き取ったふとももの突っ張り感が多少ありますが、数日でおさまる方がほとんどです。痛み止めの飲み薬を数日間使用することもあります。仕事への復帰は、デスクワークであれば退院してすぐされる方もいますが、立ち仕事の方は2週間程度療養される方もいらっしゃいます。体への負担は少なく、早期の社会復帰が可能です。
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