慶應義塾大学血管班の基礎研究

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研究

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「難治性皮膚潰瘍を対象とした間葉系幹細胞由来血小板様細胞(ASCL-PLC)の探索的臨床試験」

本研究では、皮下脂肪組織に存在する間葉系幹細胞から作製した間葉系幹細胞由来血小板様細胞(ASCL-PLC)の難治性皮膚潰瘍に対する安全性及び有効性を探索的に評価することを目的としたヒト初回投与試験である。 虚血性皮膚潰瘍は、標準治療である血管内治療施行後の1年後の創傷治癒率は70%程度、外科的バイパス術の6ヶ月後の創傷治癒率は50%程度であり治癒には時間を要する。また血行再建手術によって治癒が得られた症例においても、3年間で43.9%と高率に皮膚潰瘍の再発がみられるともいわれている。静脈うっ滞性潰瘍は50%以上の症例で一年以上の治療を要するといわれており、また治癒後の再発率は57%にのぼるとの報告がある。以上より潰瘍治癒が促進される治療が望まれている。ASCL-PLCは、間葉系幹細胞由来の血小板様細胞であり、治癒促進効果を非臨床試験にて確認している。本研究の実施は難治性皮膚潰瘍の新規治療法としてのASCL-PLCの開発の加速につながると考えられる。

「周術期管理において重篤な合併症である縫合不全におけるプレセプシンの有用性の検討」

一般・消化器外科領域の周術期管理において縫合不全は重篤な合併症の1つである。早期診断・治療においてCRP、プロカルシトニンなどのマーカーが用いられているが、Onsetとの時間差は否めず、特異度も高くはない。より早期診断の指標となりうるマーカーが望まれる。近年敗血症の早期診断においてプレセプシンが有用であるという報告がある。本研究はマウス腹膜炎モデルを用いて、プレセプシンが敗血症のみならず、周術期管理の重要な合併症の1つである縫合不全に対する早期診断についても有用となりうること検証する。

「遺伝子改変ブタを用いた血行再建における末梢血管血流量の生理学的・臨床的意義の解明」

近年の高齢化とともに動脈硬化を起因とする末梢動脈疾患が、患者の運動の自由を奪い、生活の質を低下させ、我が国の健康寿命をも低下させる要因となっている。現時点ではカテーテル治療は大きな成果を上げているが、その治療効果に関して、定量化や予後の予測は未だ出来ていない。本研究は、遺伝子組み換えブタを用いた動脈硬化症動物ブタモデルを作製し、レーザー血流計により血行再建治療後の血流量を測定し、血流量の低下・治療による増加等の効果判定を他の従来検査法と比較しながら生理学的解析を行い、その結果をもとに臨床研究を行うことで臨床学的意義と結び付け、治療の指針となる基準を決定することを目的とする。

「急性下肢虚血患者の重症度分類についての研究(TOMA-Code)」

急性下肢虚血患者のより客観的な重症度分類を新たに作成することを目的とする。下肢動脈領域(腹部大動脈、腸骨動脈、大腿膝窩動脈、膝下動脈)の狭窄閉塞病変で急性下肢虚血を呈しており血行再建術または下肢切断術を予定している患者のデータ登録を行い1年間観察し、その後統学的解析を行い分析する。

「慶應義塾大学外科・関連多施設における大動脈瘤治療を解析する観察研究」

大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair; EVAR)は、従来の人工血管置換術と比較し、低侵襲であり、急速に普及している。世界では1991年に初例が施行されてから、既に20年以上の歴史があり、数々の解析が行われてきている。その一方、日本ではEVARが2007年に初めて施行可能となったこともあり、文献検索を行っても、長期成績を含め、解析が行われたものはわずかしかない。しかしながら、日本人を含めアジア人は、解剖学的にも、さらには凝固能的にも欧米人と大きく異なるため、欧米におけるエビデンスがそのまま適用されない可能性もあり、日本におけるEVARを詳細に解析する重要性は極めて高いと考えられる。慶應義塾大学外科関連多施設におけるEVARの特徴およびその成績を検討するために、開腹手術を含む大動脈瘤治療全症例を、共通の台帳を用いて詳細に解析を行っている。

「末梢血管疾患診療に関する多施設共同観察研究」

慶應義塾大学医学部一般・消化器外科、および関連多施設にて経験した末梢血管疾患について、前向きあるいは後向き観察研究を行うことで疾患の特徴を明らかにし、末梢血管疾患に対する診断方法や、手術を含めた治療方法など、標準的診療の確立を目指す。

「光超音波イメージング装置を用いた画像診断」

末梢血管診療において、超音波検査、(造影)CT検査、(造影)MRI検査、血管造影検査などの画像検査は必須であるが、詳細な病変を把握できる非侵襲的な検査は存在しない。近年、我が国で開発された光超音波イメージング装置(PAI: Photoacoustic imaging system)は、超音波と光による生体計測を融合した新しい非侵襲的画像診断法として、悪性腫瘍やリウマチ性疾患、皮膚疾患など血管に変化が現れる様々な疾患や、形成外科や再生医療など、血管の評価が求められる領域で期待されている。すでに乳腺領域では非侵襲的乳がん診断を目的とした臨床試験が行われている。我々は、PAIを使用した新たな脈管病変画像診断法の開発を目的とした臨床研究を行っている。

「脱細胞化、再細胞化技術を用いた再生型カバードステントの開発」

末梢動脈疾患の血管内治療で用いる金属ステントには、再狭窄や破損、追加治療の阻害など未解決の問題を抱えている。それらを解決可能な、再生型カバードステントの作成を試みる。既存の生体吸収性ステントを骨格とし、脱細胞化、再細胞化により作成した血管移植片をグラフトに用いカバードステントを作成する。治癒に必要な期間を過ぎた後にステント部分は吸収され、再細胞化したグラフトは早期の血栓閉塞を防ぎつつ、徐々に自己細胞が誘導されることで、最終的に自己動脈と一体化する次世代型カバードステントの開発を目指している。

「分子状水素を用いた新しい下肢虚血再灌流障害抑制法の開発」

下肢急性動脈閉塞において虚血再灌流障害を抑制することが、救肢、救命の鍵となるが、未だ有効な治療法は存在しない。近年、虚血再灌流障害に対して水素が有効である報告は多く散見されるが、下肢虚血再灌流障害に対する報告はない。そこで本研究は、下肢虚血モデルマウスと下肢虚血再灌流モデルマウスに対し水素投与を行い、レーザードプラーによる血 流測定、炎症性サイトカインや活性酸素種などの測定、前脛骨筋の組織学的評価などを行う ことで、水素の虚血耐性効果ならびに虚血再灌流障害抑制効果を検証する。また、mRNAを抽出し遺伝子発現を網羅的解析することで、水素の生体内でのメカニズムを明らかにすることを目的としている。

「フリーラジカルによるステント内再狭窄予防のための低侵襲治療の開発」 

近年、下肢閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療(ステント留置)は目覚ましい発展を遂げているが、ステント内再狭窄は未だ解決されていない問題である。本研究の目的は、このステント内再狭窄をより低侵襲に克服することにある。すなわち、現在臨床利用されている金属ステントに超音波を照射し、フリーラジカルを発生させ、血管平滑筋細胞の異常増殖を抑制することにより、外来などで簡便に繰り返し施行できる低侵襲なステント内再狭窄抑制の方法を開発することである。すでにウサギの内膜肥厚モデルで実験モデルは確立されているが、本研究では実臨床への導入を視野におき、解剖学的によりヒトに近いとされるミニブタを用いて、その効果を検証する。

「肝虚血再灌流障害抑制/抗血小板作用を持つ薬剤溶出生体吸収ステント開発と肝移植応用」

肝移植における門脈合併症(門脈吻合部狭窄・屈曲・血栓)ならびに虚血再灌流障害は未だ解決されていない問題である。抗血小板薬シロスタゾールは閉塞性動脈硬化症に対する安全性の高い第1選択薬であるとともに血管壁の新生内膜増殖抑制効果ならびに臓器虚血再灌流組織障害の抑制効果も示唆されている。本研究の目的は、シロスタゾール溶出生体吸収性ステントを作成し、ブタ肝移植時の門脈吻合部に同ステントを留置することで門脈合併症の予防とともに虚血再灌流障害を抑制する新たな治療法を開発することにある。

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